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トソンラン

土城廊

金 史良

「文芸首都」1940(昭和15)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,752 字 · 52 页

青空文庫

そこは河岸の倉庫の軒の下で、誰かが莚を被って寝ていた。それはびくっと動いたようである。踏み附けられた男が莚の下からうんと呻きながら首を突き出した時、彼は愕然と驚いて転げるように逃げ出した。吃男だったのだ。何だか自分の最後の姿を見せ附けられたようで彼は一目散に走って行った。そして怖ろしい妄想から逃れようとでもするように手当り次第何事にも無我夢中に働いた。それでこの数日間というものは元三の助けを借りなくても、自分でお米さえ稼いで来ることが出来た。

或晩は殊に珍しい程いい機嫌になって婦に呟いたのである。

「二日後にあ倉庫の仕事をするだで」

婦は目を丸くして驚いた。倉庫の仕事は組合加入者だけの手でなされるもので、支械軍のような浮浪労働者には許されぬことを婦は知っていた。

「そったらことお前さんに出来るだか」

「世話するちゅう男がいてな」

その実、先達は帰り道で同じ村の炳吉に偶然遇ったのだった。それは気骨壮大な男で、もとは隣家の下男をしていたが今は組合に加入して働いていた。炳吉は或は先達の変り果てた姿に強い同情を覚えたのであろうか、無理をしてでも倉庫の仕事の仲間に入れてやろうと約束したのだった。