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トソンラン

土城廊

金 史良

「文芸首都」1940(昭和15)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,752 字 · 52 页

青空文庫

彼には余りにも重い荷であったからである。一寸した刹那である。千仞の崖の上に立ったように目まいがした。急に目先が真暗になった。そしてそれが先達の最期だった。

先達の屍体にはただ大きな黒い蠅の群が集まったり、ぶうんと離れたりする。取りまいている人々も死者のようにそれを誰一人取り払おうとはしなかった。血まみれの上衣、袴。繃帯で巻かれている細い胴。棒切れのような黒い足。繃帯の下から半ば目は閉じたまま血光り、鼻腔には綿が詰め込まれていた。先達のこうした無慙な姿に、元三爺は深い悲しみに陥って、ただ臆病そうな目をじっと据えて身動きも出来なかった。

先達を背負って来た炳吉は胡坐をかいた腿の上に両手を突き立て、婦の泣き悲しむ様を茫然と見守っていた。鼻梁のそばに痘痕のある顔を、時々ひくひくふるわせている。そげた頬の皮が痙攣するのだった。

婦は赤く爛れた目をしょぼつかせつつ泣いていた。夫の屍体にくずおれ、彼女は凡てを詫び祈るような気持だった。子供は泣き疲れている。涙がよごれた頬を伝い、肋骨のあらわな胸を流れて大きな腹の方へ這い下りていた。

「お前さん、どうして死んだだよ。