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トソンラン

土城廊

金 史良

「文芸首都」1940(昭和15)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,752 字 · 52 页

青空文庫

積荷のあてがなくごろごろ寝転んでいた彼等にとって、それはもって来いの慰みだったのだ。

――山から出て来た熊のようだで。

一人が叫んだ。皆はにやにやわらい出した。

――いや虎だぞ。

「う、わっしあ」愚直な爺はうろたえて方々へ頭をぺこぺこ下げた。「丁元三でごぜえますだ。う、山の者でがすだ」と云いつつ、今度は一人一人の前をぐるぐる拝んで廻った。

――まるで粉挽屋の牛でねえか!

支械の林はどっと喊声を挙げた。元三はいよいよ間誤ついて大きな目をぐりぐりさせ、自分の身をどう始末していいか天手古舞いをした。支械軍はますます面白がってえへらえへら笑ったり、口々に脅かしてみたり小突いたりした。

これを見かねて或る中年の支械男が爺を静かな一隅へ連れて行った。男は爺にか細い声で何処から来たのかと質ねた。目の鋭く色の蒼ざめた男だった。危かしい程ひょろ長い脚にはよれよれの袴がまつわりついていた。元三はぶるぶるふるえつつ何度も腰を折った。

「孟山からでがす。丁元三ちゅうもんでがす……」

「ここさいねえで酒幕(木賃宿)へ行くがええだ」

「わ、わっしあ、う、おあしをもたねえんでがす」

「何だって来ただや?」