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もぐら

土竜

佐左木 俊郎

「文章倶楽部」1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,991 字 · 21 页

青空文庫

「ほんでもな、天気がいいがら、少し稼いで来んべで。――まだ、話は晩にでも出来んのだから……」

「俺は父、明日の朝出発のだで。」

「明日の朝? 魂消た早えもんだな。もう少しいでも宜かんべどきに……」

梅三爺は爛れた眼をぱちくりさせながら、一度手にした唐鍬を置いて、炉傍に戻って来た。そして煙管をぬき取った。

「ほだって、俺も忙しいがんな。みんな待ってべがら。」

「なんぼ忙しくたってさ。」

梅三爺は少しむっとしたようであった。

「天王寺の竜雄さんなんざ、百姓に限るって、あの人達こそ百姓などしねえでもいい人達なんだが、ほんでもあれ、生まれた土地がいいどて、ああして帰って来てんのだぢあ……。どういうわけだべな? 汝は、他国さばり行ぎだがって……。俺もこれ、近頃は弱ってしまって……」

梅三爺の爛れた眼には涙が湧いて来た。それが静かに頬の上にあふれて来つつあった。

「俺だって父、好ぎで行ぐわけでねえちゃ。竜雄さん等みてえに、自分の好ぎなごとしていで、ほんで暮らしが出来っこったら、父どこ置いで俺だって、何も北海道きって行きたく無えげっとも……」

市平は途切れ途切れにこう言ったが、ここまで来ると、重苦しいものの胸に横たわるような感じに、すっかりその言葉を遮られてしまった。