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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
茂子の膝の焦げあとへ小さい涙の滴がぽたり落ちた。それを見て二人はすまないような、それでいてどこか満足したような快さを味わった。それはしびれた自分の手足をつねって感じる快さであろうとは彼女達は知るまい。――よいことにはそこへ、「只今」「只今」と富江と米子と市子が帰って来たことだ。
「女将さん只今――外花がついてあたしが十二枚、米子ちゃんと市子ちゃんが二十四枚。三十六枚ありましたのよ」
妓達の争いには最後まで沈黙して、仲へ這入らないで見過す女将はさっきから帳面をいじくって過ごしていたが、富江のさし出す花札を手にとってはじめて顔をあげた。
「わりに早かったじゃないか」
「途中で旦那は電話がかかって帰ったのよ。それでももう十時近いじゃないの」
「もうそんな時間かえ」と彼女は呆けたように言った。
米子と市子は鏡に自分達の艶麗な姿を写しあって、子供らしい、虚栄な悦びを感じあった。無理に飲まされた一杯の酒がまだ身内にこもっていて、熱が全身に脈うってくる。二人は台所へ水を飲みに行った。
「今夜は何故かみんな不景気なのね」
富江が菊龍の横へ坐ったとき十時が鳴った。同時に門口で大勢の男のはいってくる足音がして、「ここだ、ここだ」