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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
するとばったり音が止まった。森然とした静けさだ。沈黙の音楽が鳴り響いて、お光はうっとりしていた。すると梯子を下りて来る足音がした。
「ここを下りて、右へ折れなさいますと――」冬子の声だ、とお光は思った。
「いや、いい、一人行くから」
お光は梯子の方を感激の消え去らぬ瞳で仰いだ。のっしのっしときしむ音がした。そして次のひととき、一人の男が土蔵の前に下り立った。お光は何をまご/\しているのだろうと考えて思わず立ち上がったとき、お光は正面に男を見た。お光は(あっ)と全身氷のように冷えわたったような気がした。見覚えのある顔なのだ。
「あなたはあの、もしや天野――?」
「――?」天野はじいっとお光を恐ろしい力で睨まえていたが、「ううむ」と一つ唸った。「北野の……※(疑問符感嘆符、1-8-77)」と彼は押しつぶされたような声で言いかけたとき、二階から「お分りになりまして?」と冬子が下りて来た。お光ははっと心を引きしめた。「埋れたる過去」の一切の力がお光を引きしめた。
「いえ、お人違いでございました。どうも相すみません」とお光は表面平静を取り返すことが出来た。
「あら、小母さんじゃないの」