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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

彼は縋りつくように近寄って立つ和歌子を黙って見た。長い間、二人は瞳を合わして放さなかった。万感が二人の胸に交流した。もう一切が二人には分った。薄暗い夕闇に白く浮かんだ和歌子の顔が微かに慄えていた。

「わたし、すまないことをしました」

「――」

「今日、わたしも学校で叱られて、そのうえ家の母さんを呼び出してすっかり話しされてしまいました」

(馬鹿野郎! 学校教師の馬鹿野郎! とう/\僕達を堕落生か何んかのように取り扱ってしまったな! 馬鹿! 恥じるがいい! 恥じるがいい! 僕達の今を見ろ! このようにお互いに純潔な立派な心で相対しているではないか!)

「母さんにあなたのことを訊かれたとき、わたしどんなに辛かったでしょう」

「僕、あなたのお母さんに会いましょう」

「いけません! 今だってわたし逃げるようにしてそっと来たのですから」

「僕は今日、体操の教師に擲られて、その上停学に処分されたっけ」

「――あなたの母さんに御心配かけてすまないわ」

「まだ話してないさ。どうかして話さずにすましたいけれど、きっと明日あたり呼びよせるかも知れないね」

彼は母の心を想像すると暗い鬱屈を感じた。