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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

。

「今晩は」深井はその男の間近に坐った。平一郎は立って頭を下げた。

「だあれ?」その男は深井にたずねた。

「僕の親友の大河です。あなたに会ってみたいというので――」

「あ、そうですか。僕は尾沢です。つまらない奴です。どうぞこちらへ」

「ありがとう」平一郎は未だこういう風な青年に遭ったことがないので、暗い引き入れるような特有の感じを持つ青年をどう判断し、どう態度をきめてよいか分らないが、深井がようやく打ち明けてくれた一団の群の中心となる人間である以上、彼はやや遠慮勝ちに、礼儀深くした。恐らく何も知らずにこの尾沢に会ったなら軽蔑し去ったかも知れない程に彼の風采は貧相で、人生の裏通りにのみ特有な臭気と蔭がまつわりついていた。しかしこの場合平一郎にとっては熱望して来た異国の港であり、真紅のカーテンや壁際の木製の西洋風な寝台などが、尾沢の背景をなして悪い気はしなかった。尾沢は鋭い眼光で平一郎をじろ/\見た。正しく坐りこんで膝に手をおいている、そう大きくない、皮膚は黒い方で、唇を固く結んだ清く鋭い、燃えあがる炬火を時折覗かせる眼をもった少年、これが大河かと彼は思った。