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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

女は三味線も琴も生花も茶も娘の頃に習い覚えているし、ことに鼓に対しては興味もあり、自信もあり、修行ももっと積みたいと言った。最後に、自分はどうかして真実に芸ばかりで、芸妓としての生活を送りたいと言った。お光には女が本当に処女であるらしいことははじめから会得されていた。態度に一種の落着きのあるのは女の素質と知恵と教養の影響であって、「男を知った」すれっからしの故でないことも知ることが出来た。兄のために金をこしらえたい、という願い、その願いを身を売るということで充たす、そしてその芸妓稼業を芸ばかりで勤め上げたいという意気組、そこにはある厳粛な精神はあったが、同時に世間を知らない生気さがあった。お光は深い溜息をもらさずにいられなかった。女は次いで、自分の名は冬子であり、明日からこの裏手の廓の春風楼へ出ることを打ち明けた。

「冬子さん」とお光は言わずにいられなかった。「わたしは今、あなたをそういう商売をさせたくなさで胸いっぱいですが、しかしそれはどうにも仕方がありません。あなたの芸一つでやって行こうというお志は本当に好いことだと存じます。どうぞその志を捨てないでやって下さい。