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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
彼等は若いが故に平一郎の悲壮な英雄的態度にすっかりまいったのである。
夕ぐれ、平一郎は寂しいさびしい心を抱いて天野の邸へ帰って来た。彼は雷にうたれた人のように打ち沈んでいた。彼は世界的の基督教者を「やりこめた」勝利者だったが、彼は学校からの帰り路で自分が今どこへ帰ろうとしているのかと自分に尋ねたとき、彼は苦しくなった。天野へ! ああ、A氏の金の指輪を偽善者! と叫ぶことの出来たこの自分は、更に浅ましい偽善者ではないか。「天野の世話」になることがすでに何となく心咎めのすることであるのに、「冬子」の存在! 母の戒め! 平一郎は淋しい、「神」に見放された「自信」のない心を抱いて、夕飯も食わずに自分の部屋に閉じ籠ってしまった。苦しい戦いが彼のうちで渦巻いた。
(汝は天野の世話になってはならない! 汝は天野夫妻に一切の事実、冬子のこともお光のことも正直に打ち明けなくてはならない! まず汝自身を清くせよ! 汝自身を清くしたるのちにはじめて汝の使命を全うするがいい!)
「それは、それは出来ない――」(そうすることは冬子、母、天野、自分の破壊になってしまいはしまいか※(疑問符感嘆符、1-8-77))