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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
先の見えすくのに、その不幸の来るのを待っているほど自棄な気持になるにはお光はあまりに平一郎の未来を信じ、祝福し、重大視していた。彼女は冬子に打ち明けた。冬子は春風楼の裁縫師が止めたから来てはどうかと言った。母子二人が食事して、月五円の手当だと言った。お光はどうしようかと長い間考えずにいられなかった。遊廓の近くに移って来たことさえが平一郎のためによいことでないと思えたのに、そうした廓の娼家に住むことが決してよい感化を与えないことは分りきったことのように考えられた。しかし、現在のままで生活することは残り少ない貯金を更に短い間に消費してしまうことでしかなかった。彼女は仕方がないと思った。また彼女の生きて来た生涯の体験に照してみて、たとえ娼家の一隅に生活しようともそれによって平一郎の人格が動揺するようでは頼母しくないとも考えられた。冒険ではあった。しかし彼女はとにかく住みこんでみようと決心した。悪ければ悪いでどうにかしよう、少なくともこのまま滅亡するのを待っているよりはよい、と。そうしてこの生活の闘いと独り子の心配とが彼女の生来の娼婦や淫売に対する本能的な嫌悪と同情とを忘却せしめた。