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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

そういう鼻も大きく、眼も大きく、口も厚ぼったい、鶴子の上半身に光沢のないのにお光は物足りない悲しさを感じていた。

「早く顔を洗っていらっしゃいな――小母さん、この人が鶴子さんていうんですの」

冬子は今度はお光の方に話しかけた。

「見ただけの女ですわ、小母さん、あははははは」

鶴子が去った。米子と市子の二人の少女は、階段の横の火鉢棚の上から青銅の重い火鉢を下して、吸殻を取りよけたり灰をならしたりしながら、ちょいちょいお光の方を盗み見ていた。米子は瓜実顔の、鼻が少し透り過ぎてさきの方が垂れ下がっているようにさえ見えたが、一重瞼のいい眼をもっていた。市子は肉付の豊かな、眉毛と眼のところに穏やかな優しみのある、顎の丸い唇が少しお喋りらしく開いた、愛らしい少女であった。

「冬子姐さんの母さんなの」

「うそ、冬子姐さんの叔母さんなんよ。――そら、裏の中田の二階にいらしった、あのお仕事の小母さんなのよ」

「あ、あの小母さんなの。――そんならね、そら、平一郎さんて中学校へ出ている方の母さんなのね」

「ま、市子ちゃんは平一郎さんを知っているの」

「知っているわ」

「わたしだって知っているのよ」