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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

「あっははははは、うそ/\、あたしと吉っちゃんがそっと襖の間からのぞいて見たら、二人ながら目をあけたまま一緒に寝ていたじゃないの。富ちゃんこそ着物を着替えてからでさえまた寝ているんだもの、あははははは」

「あたしと吉っちゃんですとさ、あははははは、吉っちゃんはいい男ね、菊ちゃんの大切の大切の――」

「富ちゃん、お止しなさいよ。丹羽さんこそ苦みばしって、会社員で御当世じゃないの。吉っちゃんなんかたかが西洋雑貨店の番頭さんですわ」

「そうでしょうよ、たかが雑貨店の番頭さんが、黄金の指環を買ってくれるのですから、大した番頭さんですよ」

「富ちゃん! そんなら、縮絞の単衣を買ってくれたのは誰あれ※(疑問符感嘆符、1-8-77)」

「あら、まあこの人はそんなことまで知っているの。まあこの人は本当に油断もすきもありゃしないのね」

二人は笑いこけた。七月近かった。熱気が地より湧きたち、人身の底からじく/\汗がにじみ出た。

「菊ちゃん富ちゃん、お楽しみ! よく今日帰って来たのね。あたしもう帰って来ないのかと思っていたわ」

川岸沿いの大きな鉄冷鉱泉にゆっくりと肉体を温めて、襟頸から頬にかけて湯上りの白粉を一刷毛真白く塗って、一日中で一番生心地のある感じを保ちながら時子とお幸は帰って来た。