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ほうおんき

報恩記

芥川 竜之介

自称大盗的阿媽港甚内深夜来访,却不是为了偷窃,而是请求为某人的灵魂做弥撒。他到底是善是恶?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,803 字 · 30 页

青空文庫

宵闇の夜の浅い内ですから、御簾越しに火影がちらついたり、松の中に花だけ仄めいたり、――そんな事も見たように覚えています。が、長い廻廊の屋根から、人気のない庭へ飛び下りると、たちまち四五人の警護の侍に、望みの通り搦められました。その時です。わたしを組み伏せた鬚侍は、一生懸命に縄をかけながら、「今度こそは甚内を手捕りにしたぞ」と、呟いていたではありませんか? そうです。阿媽港甚内のほかに、誰が内裏なぞへ忍びこみましょう? わたしはこの言葉を聞くと、必死にもがいている間でも、思わず微笑を洩らしたものです。

「甚内は貴様なぞの恩にはならぬ。」――あの男はこう云いました。しかしわたしは夜の明け次第、甚内の代りに殺されるのです。何と云う気味の好い面当てでしょう。わたしは首を曝されたまま、あの男の来るのを待ってやります。甚内はきっとわたしの首に、声のない哄笑を感ずるでしょう。「どうだ、弥三郎の恩返しは?」――その哄笑はこう云うのです。「お前はもう甚内では無い。阿媽港甚内はこの首なのだ、あの天下に噂の高い、日本第一の大盗人は!」(笑う)ああ、わたしは愉快です。このくらい愉快に思った事は、一生にただ一度です。