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しおをのせたふね
塩を載せた船
小川 未明
「童話」1923(大正12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,881 字 · 12 页
「まあ、こんなになってしまったのか?」と、彼は、その荒れ果てた野原の中に立って、足もとに散らばった材木や、ものの壊れたのや、大きな家が建っていた跡らしい、礎などを見まわしながら、いろいろの思いにふけったのです。
彼は、あまりのはげしい変わり方と、あわただしいできごとのために、なにを思うともなく、しばらくは、ただぼんやりとしていました。
そのうちに、青ざめた月が空に上りました。そして、この荒れはてた景色と、ぼんやりと考え込んでいる哀れな乞食とを照らしたのです。
そのとき、月が、うなだれている乞食の耳もとにささやいたのであります。
「大きな海嘯で、みんな沖へ持っていかれてしまった。しかし、まだすこしは残っていよう。おまえが、いつかなにかくださいと頼んだとき、なにもやるようなものはないといったが、まあ、あすこをごらん、あんなに光っているものがある。あれはダイヤモンドだ。ぜいたくな女の指にはめた、指輪についていたのだ。まあ、あすこをごらん、あんなにぴかぴか光っているものがある。あれは、強欲なじいさんが大事にしまっておいた黄金の塊だ。しかし、もうみんなその人たちは、どこへかいってしまった。