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きょうかいなきさべつ

境界なき差別

丘 浅次郎

「心理研究  第10巻」1916(大正5)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,992 字 · 18 页

青空文庫

今日までに学問の進歩したのは、主として分解的研究の賜であって、今後とても、ますます分解的研究を進めねばならぬが、一方に分解的研究を努めると同時に、他方には、その結果を総合することが必要である。しかして総合するにあたって、けっして忘れてはならぬのは、仮想の境界線をことごとく消し去ることである。これを忘れると、分解したものをいかに正しく総合しても旧のとおりにはならぬ。学問研究に分解の必要なのは何故かといえば、これは人間の力に限りがあって、同時に全部を研究し得ぬからである。まずいくつかに割って、一部分ずつ調べてかかるより外には途がなく、くわしく調べようと思えば思うほど、まず細かく割ってかからねばならぬ。その有様はあたかも一度に口に入れかねる大きな煎餅を食うにあたって、まずこれを口に入るだけの大きさに割って、一部分ずつ片付けてかかるのと少しも違わぬ。すなわち割らねば手に合わぬゆえに割るのであって、煎餅の方にはけっして初めから割れ目はなかった。されば分解的研究の結果をいかに巧みに継ぎ合せても、その間に割れ目の存してある間はけっして分解以前のものと同一ではない。