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こわれたバリコン

壊れたバリコン

海野 十三

「無線と実験」1928(昭和3)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,132 字 · 23 页

青空文庫

内儀に訊すと果せるかな、僕が前日憲兵隊に引留められている間、数名の将校が僕の室を占領し、昨夜は一同眠りもやらず徹夜し、今朝がたになってやっと引上げて行ったとの事でした。僕は不愉快でたまりませぬ。しかしセントー・ハヤオのことが一層気にかかるので大急ぎで短波長の送受信機の前に座って受話器を耳に当てたり、送信機の電鍵を叩いたりしましたが、機械はたしかによく作働しているのにも拘らず、何時まで経ってもセントー・ハヤオの打ち出す無線電信の応答は聞こえませんでした。かくして夜に入りました。依然として何の信号も入って来ませぬ。そして空しく其の夜は明けはなれて行きました。

僕は其の日に例の将校連が来るかと不眠に充血した眼を怒らして待ちうけましたが、誰一人としてやって来ません。勿論歩哨の兵士すら居ませぬ。僕は到頭腹を立てて仕舞って、こっちから憲兵隊へ押しかけました。ところが驚いたことには、何と言っても僕を例の将校達に会わせないのです。そればかりか遂には僕をありもしない妄想に駆られている人あつかいにして警官を呼ぼうなどと言うではありませぬか。僕は泪をポロポロ流し乍ら、その下宿へ引きかえさねばなりませんでした。