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へんなおとこ

変な男

豊島 与志雄

「中央公論」1923(大正12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,508 字 · 81 页

青空文庫

」

「なあに僕のは天才教育だからさ。」

そういう中村の眼を見返して、澄子はくすりと笑った。

「こういう凡才を相手だと、骨が折れますよ。」と中村は今井の方に言葉を向けた。

今井はぼんやり何かを考え込んでいた。それからまた話しかけられても、短い返辞をするきりで、多くは黙っていた。しまいには縁側に立っていって、金魚に見入った。

その金魚を、今井は自分のもののように大事にし出した。何処から聞いてきたのか、金魚の飼い方をいろいろ述べて、麩なんかをやってはいけないと云った。

「金魚に麩は、人間にお茶のようなもので、食べても少しも滋養にはなりません。その上可なり不消化です。麩よりも、御飯や鰹節をやった方がいいんです。」

「だって、御飯をやれば、眼の玉が飛び出すというじゃありませんか。」

「そんなことはありません。やりすぎて、消化が悪くなって、痩せるから飛び出すんです。」

そして毎日夕方、彼は水を半ば取代えてやった。大きなバケツに、水を半分ばかり汲んで、それを何度も運んだ。一杯汲んで運んだら早く済むのに、と澄子が云うと、重くって仕方がないと答えた。澄子は笑い出した。

「私水一杯ぐらい平気よ。