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へんなおとこ
変な男
豊島 与志雄
「中央公論」1923(大正12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,508 字 · 81 页
」
澄子は言葉もなくて、今井の顔をぼんやり見つめていた。その時今井は、半分机によりかかっていたが、急に向き返って、膝をきちんと合せ、握りしめた両の拳で腿の上を押えつけながら、少し頭を傾げて云った。
「澄子さん、私はあなたに真面目に聞いて頂きたいことが……いや、真面目に聞かして頂きたいことがあるんです。」
「なあに?」と口の中で云いながら、澄子は一寸居住居を直した。
「本気で、心から、私に聞かして頂きたいんです。」
「どんなこと?」
「あなたは、私を……どう思っていられるんですか。」
「どうって……。」云いかけておいて彼女は、今井の真剣な気勢に打たれてさし俯向いたが、やがて静に続けた。「私にはよく分らないけれど、あなたは、詩人で夢想家で、そしていくらか野蛮人みたいな……そして一寸変った人だと思ってるわ。」
「いえそんなことじゃありません。……私の云いようが悪かったかも知れませんが、そんなら云い直します。あなたは私を……。」そこで彼は文句につかえて、自分で自分を鞭打つように、膝の拳をぎゅっと押えつけた。そして云い直した。「あなたは私を、どんな眼で見ていられるんですか。