轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

へんじんでん

変人伝

佐々木 邦

「日の出」新潮社、1934(昭和9)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,178 字 · 21 页

青空文庫

「もう入らない。君の家には取るものがないと見極めがついたんだから」

「いや、他の奴が来るかも知れない。その時の用心だ」

「ないものは取れない」

「昨夜の奴のように諦めて帰って行けば宜いけれど、強盗ってものがある。本当になくても、あると思えば命を取る。その時の用心に幾ら持っていれば堪忍して貰えるだろう?」

「さあ。百円かな?」

と竹内さんは冗談の積りだった。しかし叔父は以来百円の現金を必ず用意していた。僕はこの一事で見極めがついた。母の言った通り、叔父は学問の為めに常識が圧倒されている。学者としては相応豪いかも知れないが、社会人としては低能に近い。

竹内さんだけは仲違いをしなかった。学問中毒の叔父から見ると株屋は眼中にない筈だが、この托鉢居士が一番尊敬されていた。居士は碁を打たない。随って叔父の感情を刺戟しないからかも知れない。いつも折り合っている。しかし或晩叔父が、

「半分僕に貸してくれ」

と言い出した時、僕は少し心配になった。

「宜しい」

「君は矢っ張り話が分る」

「他ならぬ君のことだ。何かの因縁だよ。半座を分けて来世まで附き合おう」

「それで僕も安心した。何方か先に行ったものが待っていれば宜いんだ」