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なつのそうれつ

夏の葬列

山川 方夫

山川方夫『夏の葬列』。同一底本的分册已合并为一书。收入:夏の葬列、十三年、朝のヨット、煙突、お守り、一人ぼっちのプレゼント、待っている女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,161 字 · 122 页

青空文庫

が、往復五時間弱――いや、ときにはもっと長くなってしまう――もかかる寒中の汽車通学は、けっして安楽なものではなかった。

往きはまだよかった。うまく行くと二宮からでも坐ることができたし、また列車の前部に乗り目を光らせてさえいれば、平塚でどっと降りる労務者のあとに席をみつけ、そのまま品川まで読書にふけるのも可能だった。が、帰途はすさまじかった。学生定期は品川からだったが、まず、乗れないことがあるのを覚悟せねばならない。だからといって東京駅にまで行って席を取れば、どうしても三列車か四列車は遅れて、泣きたいようなひもじさがつのってくる。文字通り殺人的な混みよう(デッキにぶら下がった一人が、線路わきの電柱で頭を打って顛落し、即死したのを目撃したこともあった)の上に、横浜あたりからさらにラッシュ・アワーにぶつかり、同じハンガー・コンプレックスに目を血走らせた進駐軍労務者たちが、まるで戦争のような勢いで窓やら連結器やら、あらゆる車内への侵入場所をめがけてなだれこんでくるのだ。ぼくの帰る汽車は、だから二宮着がたいてい五時半から七時までのどれかとなり、毎日三時すぎに学校を出るのに、どうしても一定しないのだった。