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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页

青空文庫

小沢、体をかわす。

針助、飛び掛って行く。

小沢、簡単に針助を投げ飛ばして押えつけ、次郎と三郎らに眼くばせして、針助を縛らせる。

針助の背中の刺青に、食い入るように、きつく紐が掛けられる。

(シナリオなら、ここでこの場面が消えるのである)

氷の階段

中之島公園を引き揚げた豹吉、亀吉、兵古帯のお加代、唖の娘その他青蛇団の連中は、やがて堂ビルの横を東へ折れて行った。

その辺り――堂ビルの裏側は焼跡で、ひっそりと暗かったが、たった一つ、ぽつりと灯がついているのを見ると、豹吉は、

「ああ、あそこや、あそこや」

と指した。

ブルウスカイ(青空)というコッテエジ風の喫茶店兼料理店であった。終戦後大阪の町々に売出した喫茶店は、たいてい俄づくりのバラックで、荒削りのいかにもドサクサまぎれに出来たという感じの、味もそっけもうるおいも色彩もない店だが、ブルウスカイはやはりバラックづくりながら、コッテエジ風の建て方や、店の装飾に、アメリカ式の軽快なスタイルと仏蘭西趣味の色彩が採り入れられていて、戦前の豪華な喫茶店よりも、かえって垢ぬけていた。

深夜、焼跡の中にぽつりと灯がともっているというのも、何か山の小屋のような感じで、豹吉はふっと心に灯がついた想いだった。