轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页
バラックだが、安っぽい荒削の木材の生なましさや、俗々しいペンキ塗り立ての感じはなく、この界隈では垢抜けした装飾の店だった。
豹吉はハナヤの前で再び腕時計をみた。十時……。
「丁度だ」
はいろうとした途端、中から出て来た一人の男がどすんと豹吉に突き当りざまに豹吉の上衣のかくしへ手を入れようとした。
「間抜けめ!」
低いが、豹吉の声は鋭かった。
男はあっと自分の手首を押えた。血が流れていたのだ。
鋭利な刃物が咄嗟に走ったらしかった。走らせたのは豹吉だ。
豹吉はあっけに取られている男の耳へ口を近づけると、
「掏るなら、相手を見て仕事しろ」
「豹吉だなア」
男はきっと睨みつけると、覚えていろと、雑踏の中へ姿を消した。
「間抜けめ! お前のような間抜けのことをいつまでも覚えてられるか」
ひょいと出た洒落に押し出されるような軽い足取りを弾ませて、兄弟を連れてはいると、豹吉は素早く店の中を見廻した。いない……すかされた想いに軽く足をすくわれて、ちょぼんと重く坐ると、
「なんや、雪子はまだ来てないのか」
めずらしく寂しい影がふと眉の上を走った。
雪子――。
記憶の良い読者は覚えているだろう。