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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页

青空文庫

小沢ははっと眼をそらした。同時に、娘も急に身をすくめて、しゃがもうとした。

が、再び視線があった時、もう娘は、

「助けて下さい!」

とすがりついて来た。

昭和二十一年五月一日の、夜更けの出来事である。

小沢はまるで自分の眼を疑った。

いかに深夜とはいえ、敗戦の大阪とはいえ、一糸もまとわぬ若い娘の裸の体が、いきなり自分の眼の前に飛び出して来るなんて、戦争の影響で相当太くなっているはずの神経にとっても、これは余りに異様すぎる感覚だった。

しかも、まるでこの異様さをもっと効果的にするためと云わんばかしに、わざとのような土砂降りの雨だった。

溺死人、海水浴、入浴、海女……そしてもっと好色的な意味で、裸体というものは一体に「濡れる」という感覚を聯想させるものだが、たしかにこの際の雨は、その娘の一糸もまとわぬ姿を、一層なまなましく……というより痛々しく見せるのに効果があった。

そこは四ツ辻だったが、角の家に一軒門燈がついていて、その灯りが雨を透して、かすかに流れていたから、娘の顔はほのかに見えた。

あどけない可愛い顔立ちは、十六、七の少女のようだった。しかし、むっちり肉のついた肩や、盛り上った胸のふくらみや、そこからなだらかに下へ流れて、一たん窪み、やがて円くくねくねと腰の方へ廻って行く悩ましい曲線は、彼女がもう成熟