轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页
「――もしかしたら……何かが……」
あるのではなかろうかという予感が、ないわけでもなかった。
「とにかく宿へ帰ってみよう」
著物を持たずに帰ったところで致し方はないが、しかし、寿司の土産はある。
著物を手に入れるあてもなく、まごまごしていたずらに時間を空費しておれば、雪子の空腹は増すばかりだと、小沢は淀屋橋から地下鉄に乗った。
(作者はここで再び註釈をはさみたい。――即ち、偶然というものは、続き出すときりがない……と。)
亀吉が同じ車輛に乗り合わせていたのだ。
しかし、小沢は亀吉の顔には見覚えはなかった。たとえ亀吉の顔を見ても、それが自分の荷物を横取りした男だとは、気がつかなかった。
亀吉の方でも、小沢に気がつかなかった。
車内が混んでいたからだ。
ところが、電車が大国町の駅を発車して間もなく――。
「掏摸だ」
という声があった。
声はすぐ人ごみの隙間を伝わり、
「掏摸だ、掏摸だ」
真青な唇と、不安な唇と、好奇的な唇が、右へ向き、左へ向いた。
何を見ても、何をきいても、日々これ驚くべきことばかしの近頃の世相である。いちいち莫迦正直に驚いていては、弱い神経の者は気が狂ってしまう。