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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页

青空文庫

一人前の掏摸になるネやったら、おっさんの云うことをきいたら、間違いない。まず刺青をするこっちゃ。ええ顔の掏摸になれるぜ」

「…………」

「どや、もっと食べるか」

と、針助はまたパンを出した。

「おっさんとこイ来たら、いつでもパンを食べさせたる」

「おおけに……」

「それから……」

と、にやりと笑って、

「――刺青をしたる」

「えっ……?」

刺青ときいて、次郎と三郎はまるで腰を抜かしてしまった。

「刺青はして貰わんでもかめしめへん」

次郎はあわてて言った。

「なんぜや」

と、ガマンの針助は云った。

「なんぜかテ……。刺青みたいなもンしたら、母ちゃんに叱られま」

「なんぜ叱られるねン」

「なんぜ言うたかテ、刺青いうたら、まともな人間のするもんと違いまっしゃろ」

次郎はませた口調だが、さすがに少年らしくぶるぶるふるえた声で言った。

「そら考えちがいやぜ」

と、針助はネチネチとした口調で、言いきかせるように、

「――刺青いうたら、ええもんやぜ。だいいちお前ら掏摸になるネやったら、刺青の一つぐらいしとかんと、幅が利かん。刺青をしてるのンと、してへんのと仲間での顔の売れ方がちがう。ええ兄貴分になろうおもたら、刺青にものを言わすのが一番やぜ」