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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
03 第二部上
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,467 字 · 47 页
宗門種々これあり候えども、畢竟人を善くいたし候趣意にほかならず。アメリカには仏の堂も耶蘇の堂も一様に並びおり、一目に見渡し候よういたしあり、宗門につき一人も邪心を抱き候ものこれなく、銘々安らかに今日を送り申し候。ホルトガル人、イスパニヤ人など日本へ参り候は自己の儀にて、政府の申し付けにはこれなく候。そのころは罷り越し候もの売買をいたし、宗門をひろめ、その上、干戈をもって日本を横領する内々の所存にて参りし儀と存じ候。右参り候ものは廉直のものにこれなく、反逆いたす見込みのものゆえ、その人物も推し量られ申し候。幸いに当時は右様のものこれなく候。
――当時の風習は世界一統の睦まじきことを心がけ、一方の潤沢を一方に移し、何地も平均に相成り候よういたし候ことに御座候。たとえば、英国にて凶作打ち続き食物に困り候えば、豊かなる国より商売を休めその食物を運びつかわし候ようの風儀に御座候。交易と申し候えば品物に限り候よう相聞こえ候えども、新規発明の儀など互いに通じ合い、国益いたし候もまた交易の一端に御座候。諸州勝手に交易いたし候わばその国のもの世界中の儀をことごとく心得候よう相成り申すべく候。