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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
02 第一部下
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,315 字 · 25 页
清助さんでも呼んで、よく相談してごらんなすったら。」
「そうしようか。京都の方へでも飛び出して行くことだけは、半蔵にも思いとどまってもらうんだね。今は家なぞを顧みているような、そんな時じゃないなんて、あれのお友だちは言うかもしれないがね。」
裏二階の下を通る人の足音がした。おまんはそれを聞きつけて障子の外に出て見た。
「佐吉か。隠居所でお茶がはいりますから、清助さんにお話に来てくださるようにッて、そう言っておくれよ。」
清助を待つ間、吉左衛門はすこし横になった。わずかの時を見つけても、からだを横にして休み休みするのが病後の彼の癖のようになっている。
「枕。」
とおまんが気をきかして古風な昼寝用の箱枕を夫に勧める間もなく、清助は木曾風な軽袗をはいて梯子段を上って来た。本陣大事と勤め顔な清助を見ると、吉左衛門はむっくり起き直って、また半蔵のうわさをはじめるほど元気づいた。
「清助さん、今旦那と二人で半蔵のことを話していたところですよ。旦那も心配しておいでですからね。」とおまんが言う。
「その事ですか。大旦那の御用と言えば、将棋のお相手ときまってるのに、それにしては時刻が早過ぎるが、と思ってやって来ましたよ。