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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
02 第一部下
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,315 字 · 25 页
ほら、あの半蔵のことだから、お友だちのあとを追って、京都の方へでも行きかねない。もしそんな様子が見えたら、清助さんにもよく気をつけていてもらうようにッて、さっきからそう言って心配しておいでじゃありませんか。」
「それさ。」と吉左衛門も言った。「おれも今、それを言い出そうと思っていたところさ。」
清助はうなずいた。
二
半蔵は勝重を連れて、留守中のことを案じながら王滝から急いで来た。御嶽山麓の禰宜の家から彼がもらい受けて来た里宮参籠記念のお札、それから神饌の白米なぞは父吉左衛門をよろこばせた。
留守中に届いた友人香蔵からの手紙が、寛ぎの間の机の上に半蔵を待っていた。それこそ彼が心にかかっていたもので、何よりもまず封を切って読もうとした京都便りだ。はたして彼が想像したように、洛中の風物の薄暗い空気に包まれていたことは、あの友だちが中津川から思って行ったようなものではないらしい。半蔵はいろいろなことを知った。友だちが世話になったと書いてよこした京都麩屋町の染め物屋伊勢久とは、先輩暮田正香の口からも出た平田門人の一人で、義気のある商人のことだということを知った。