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よなきてっこつ

夜泣き鉄骨

海野 十三

「新青年」1932(昭和7)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,273 字 · 31 页

青空文庫

それから、時が軸の上を、静かに移ってゆくのが、誰にもハッキリと感ぜられた。時の経つのに随って、一秒また一秒と、恐怖の水準線が、グイグイと昇ってくるのだった。

二分、三分、四分、五分――

夢中で、隣りの男の手を、握りしめた。冷い汗が、腋の下に滲み出して、軈てタラリと肋骨を、駆け下りた。

「キィーッ」

一同は、はッと、呼吸をつめた。

「キィーッ、キィーッ」

呀ッ、いよいよ、泣きだしたのだ。彼等はそれを鼓膜の底に聴いた瞬間、板のように全身を硬直させた。

「キィーッ、キィーッ、ぐうッ、ぐうッ」

彼等は、見えない眼を閉じた。

「キ、キ、キ、キ、キィーッ」

もう堪りかねたものか、一行のうちから、サッと、懐中電灯の光芒が、射るように、高い天井を照した。

「がーッ、がーッ……」

一同は、その怪音のする方を、等しく見上げた。

「呀ッ!」

「ク、クレーンが……」

懐中電灯の薄ら明りに、はじめて照し出された怪物は何であったろうか。それはあの巨大な鉄骨で組立てられたクレーンが、物凄じい響きをあげて、呀ッという間に、全速力で一同の頭上を通り過ぎたのであった。

「ひえーッ」

というなり、彼等は、折角手にした懐中電灯も其場に抛り出して、云いあわせたように、ペタペタと、地上に尻餅をついてしまった。