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よながひめとみみお

夜長姫と耳男

坂口 安吾

「新潮 第四九巻第六号」1952(昭和27)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,604 字 · 56 页

青空文庫

こう考えると、ワケが分ってきたように思われた。そこでムラムラと怒りがこみあげた。バカな女め。キサマ欲しさに仕事をするオレと思うか。連れて帰れと云われても、肩に落ちた毛虫のように手で払って捨てて行くだけのことだ。こう考えたから、オレの心は落附いた。

「耳男をつれて参りました」

アナマロが室内に向って大声で叫んだ。するとスダレの向うに気配があって、着席した長者が云った。

「アナマロはあるか」

「これにおります」

「耳男に沙汰を申し伝えよ」

「かしこまりました」

アナマロはオレを睨みつけて、次のように申し渡した。

「当家の女奴隷が耳男の片耳をそぎ落したときこえては、ヒダのタクミ一同にも、ヒダの国人一同にも申訳が立たない。よってエナコを死罪に処するが、耳男が仇をうけた当人だから、耳男の斧で首を打たせる。耳男、うて」

オレはこれをきいて、エナコがオレを仇のように睨むのは道理と思った。この疑いがはれてしまえば、あとは気にかかるものもない。オレは云ってやった。

「御親切は痛みいるが、それには及びますまい」

「うてぬか」

オレはスックと立ってみせた。斧をとってズカズカと進み、エナコの直前で一睨み、凄みをきかせて睨みつけてやった。