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よながひめとみみお
夜長姫と耳男
「新潮 第四九巻第六号」1952(昭和27)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,604 字 · 56 页
一度うろたえてしまうと、それを恥じたり気に病んだりして、オレの顔は益々熱く燃え、汗は滝の如くに湧き流れるのはいつもの例であった。
「こまったことだ。残念なことだ。こんなに汗をビッショリかいて慌ててしまえば、まるでオレの下心がたしかにそうだと白状しているように思われてしまうばかりだ」
こう考えて、オレは益々うろたえた。額から汗の玉がポタポタとしたたり落ちて、いつやむ気色もなくなってしまった。オレは観念して目を閉じた。オレにとってこの赤面と汗はマトモに抵抗しがたい大敵であった。観念の眼をとじてつとめて無心にふける以外に汗の雨ダレを食いとめる手段がなかった。
そのとき、ヒメの声がきこえた。
「スダレをあげて」
そう命じた。たぶん侍女もいるのだろうが、オレは目を開けて確かめるのを控えた。一時も早く汗の雨ダレを食いとめるには、見たいものも見てはならぬ。オレはもう一度ジックリとヒメの顔が見たかったのだ。
「耳男よ。目をあけて。そして、私の問いに答えて」
と、ヒメが命じた。オレはシブシブ目をあけた。スダレはまかれて、ヒメは縁に立っていた。
「お前、エナコに耳を斬り落されても、虫ケラにかまれたようだッて? ほんとうにそう?」