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よながひめとみみお
夜長姫と耳男
「新潮 第四九巻第六号」1952(昭和27)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,604 字 · 56 页
蛇のようにオレを裂いて逆さに吊すかも知れないと思った。そう思うと恐怖に息の根がとまりかけて、オレは思わず必死に合掌の一念であったが、真に泣き悶えて合掌したところで、あの笑顔が何を受けつけてくれるものでもあるまい。
この運命をきりぬけるには、ともかくこの一ツの方法があるだけだとオレは考えた。それはオレのタクミとしての必死の願望にもかなっていた。とにかくヒメに頼んでみようとオレは思った。そして、こう心がきまると、オレはようやく風呂からあがることができた。
オレは奥の間へみちびかれた。長者がヒメをしたがえて現れた。オレは挨拶ももどかしく、ヒタイを下にすりつけて、必死に叫んだ。オレは顔をあげる力がなかったのだ。
「今生のお願いでございます。お姫サマのお顔お姿を刻ませて下さいませ。それを刻み残せば、あとはいつ死のうとも悔いはございません」
意外にもアッサリと長者の返答があった。
「ヒメがそれに同意なら、願ってもないことだ。ヒメよ。異存はないか」
それに答えたヒメの言葉もアッサリと、これまた意外千万であった。
「私が耳男にそれを頼むつもりでしたの。耳男が望むなら申分ございません」