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ゆめのさつじん

夢の殺人

浜尾 四郎

「新青年」1929(昭和4)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,670 字 · 26 页

青空文庫

然しそれは自分にとって余りいい結果をもたらさないかも知れない、他の方法で要之助が存在しないことになれば或いは局面が一転するかも知れない、と思って彼は何も云わなかったのだ。

昨夜殆ど眠れなかったために、一日さぼろうと思った彼は、秋の一日を草原の中でねて暮そうかとも考えたが、結局、いつもの慰安所たる公園に来てしまった。彼は、どこかの映画館に入るつもりなのである。

朝めしを食う気がしなかったので食べずに出て来たせいか、妙に空腹を感じて来た。

然しわざわざめし屋に入る気もしなかった藤次郎は、池の角の所に出ていたゆで卵屋の所で、四ツばかり卵を買うとそれをそのまま袂に入れた。彼は映画を見ながら之を食べるつもりなのである。

卵を買ってぶらぶら歩いて行くと人だかりがしていた。見ると人力車をたてかけてその上に袈裟衣をつけた僧形の人が一生懸命に何か云っている。彼はふと足をとめてその話をきいた。何か宗教の話ではないかと思ったのだ。所が突然その坊さんは、

「然るに現内閣は……」

と云いだした。藤次郎は何となく興味を失って、そのさきにあった群衆の方に歩をうつした。彼は今どんな話にも興味がもてない。