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ゆめどのさつじんじけん

夢殿殺人事件

小栗 虫太郎

「改造」1934(昭和9)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,755 字 · 55 页

青空文庫

所が、それから五日目の夜、突然検事が招かれたので法水の私宅を訪れると、彼は憔悴し切った頬に会心の笑を泛かべて云った。

「やはり支倉君、僕は考える機械なんだね。書斎に籠ると、妙に力が違って来るように思われるんだ。とうとう孔雀明王の四本の手を※(「てへん+宛」、第3水準1-84-80)いでやったよ。然し、それは偶然思い付いたのでなくて、例の浄善尼がした不思議な旋廻が端緒だったのだ」

それから、法水の説き出し行く推理が、さしも犯人が築いた大伽藍を、見る見る間に崩して行った。そして、夢殿殺人事件は、漸くその全貌を白日下に曝されるに至った。

「所で、君にしろ誰にしろ、結局行き詰まってしまうにしてもだ。浄善尼が奇術的な廻転をした事が判ると、一応は、飛散した金泥に遠心力と云う事を考えるだろうね。そして、あの四本の玉幡が気になって来るのだが、あんな軽量なものには、たとえばそれを廻転させたにしても、結局それだけの分離力のない事が明らかなんだからね。あの一番手近な方法を、残り惜し気に断める事になってしまう。けれども、あの玉幡に、重量と膨脹とを与えたとしたらどうなるだろう」