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むゆうびょうしゃのし

夢遊病者の死

江戸川 乱歩

「苦楽」プラトン社、1925(大正14)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,121 字 · 22 页

青空文庫

「だから、だからお前は生意気だと云うのだ、一体あれを、俺に一言の相談もしないで、断ったのは誰だ。自分で断って置いて、今更ら仕様がないとは、何ということだ」

「じゃあ、どうすればいいのです。……そんなに僕がお邪魔になるのだったら、出て行けばいいのでしょう。エエ、明日からでも出て行きますよ」

「バ、馬鹿ッ。それが親に対する言草か」

やにわに父親の手が前の徳利にかかると、彦太郎の眉間めがけて飛んで来る。

「何をするのです」

そう叫ぶが早いか、今度は彼の方から父親に武者ぶりついて行く。狂気の沙汰である。そこで世にもあさましい親と子のとっ組合いが始まるのだ。だが、これは何も今夜に限ったことではない。もう此頃では毎晩の様に繰返される日課の一つなのである。

そうして、とっ組合っている内に、いつも彦太郎の方が耐りかねた様に、ワッとばかりに泣き出す。……何が悲しいのだ。何ということもなく凡てが悲しいのだ。詰襟の洋服を着て働いている五十歳の父親も、その父親の家でゴロゴロしている自分自身も、三畳と四畳半の乞食小屋の様な家も、何もかも悲しいのだ。………………………………

そして、それからどんなことがあったか。