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むゆうびょうしゃのし

夢遊病者の死

江戸川 乱歩

「苦楽」プラトン社、1925(大正14)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,121 字 · 22 页

青空文庫

装飾用の花氷だったのである。水を受ける為の装置は台に取りつけてあったので、上の氷丈けが落ちたのだ。無論それは昼間からその部屋に飾ってあったのだから、大部分解けて了って、殆ど心丈けが残っていたのだけれど、でも老人に脳震盪を起させるには十分だったと見える。

彼は驚いて窓から下を覗いて見た。そして、月あかりでそこに小使の老人が死んでいるのを知った時、どんなに仰天したか。仮令過ちからとはいえ俺は人殺しをやって了ったのだ。そう思うともうじっとしていられない。皆に知らせようか、どうしようか、とつおいつ思案をしている中に時間が経つ、若しこのまま明日の朝まで知れずにいたら、どうなるだろう。ふと彼はそんなことを考えて見た。

いうまでもなく、氷は解けて了うのだ。中のダリヤの花丈けは残っているだろうけれど、ひょっとしたら、気付かれずに済むかも知れない。それとも今から氷のかけらを拾いに行こうか。いやいや、そんなことをして若し見つかったら、それこそ罪人にされて了う。彼は床へ這入っても一晩中まんじりともしなかった。

ところが朝になって見ると、事件は意外な方向に進んで行った。