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おおきなばけもの
大きな怪物
平井 金三
「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂、1911(明治44)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,506 字 · 3 页
悪い事も考えれば善い事も考える、歩きたいと思えば足が動くし、手を揚げようとすれば手が揚がる、生理学者の説明はさることながら詮ずるに人間は一向に判らない大怪物である。この自分が大怪物である事を悟らずに種々怪物の事を想像してやれ宙を飛んだり舞ったりするのが怪物であるの、怪物に目方はないなぞと勝手に考える、しかしこれは疑えば疑が出て来る、成程地球の引力で物が下に静としているのだが、もし地球の運転が逆になったら反って宙を飛ぶのが並のもので下に静としているのが怪物になるかも知れない。また目方にしてもその通で此処で十匁あるものを赤道直下で量ったらきっと目方が減る、更らに太陽や惑星の力を受けない世界に行って目方を量るとしたら、目方はまるで無くなってしまうかも知れない。してみると目方がなければ怪物だとは一寸云い難くなる。
まあ怪物に目方があってもなくっても、そんな事は構わないとして次に大怪物である我々人間の事を少し考えたい、人間が五官によっている間はまだ悪い怪物である、世人は科学に中毒してあまりに人間の五官を買い被り過ぎている。暗いところでは何も見えない、鼠や猫に劣る眼を持って実際正確に事物が見えようか、盗人の足痕を犬のように探れない鼻で実際香が嗅げようか、舌にしてもその例に洩ない、触感も至って不完全なもので、人間はこの