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だいどうじしんすけのはんせい

大導寺信輔の半生

芥川 竜之介

信輔的童年总在肮脏泥泞的本所街头,他却爱那里的每一处破败。三十年后,依然是那些无树无花的街道闯入他的梦。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,611 字 · 26 页

青空文庫

を、――本所の町々の教えなかった自然の美しさをも発見した。この「本から現実」へは常に信輔には真理だった。彼は彼の半生の間に何人かの女に恋愛を感じた。けれども彼等は誰一人女の美しさを教えなかった。少くとも本に学んだ以外の女の美しさを教えなかった。彼は日の光を透かした耳や頬に落ちた睫毛の影をゴオティエやバルザックやトルストイに学んだ。女は今も信輔にはその為に美しさを伝えている。若しそれ等に学ばなかったとすれば、彼は或は女の代りに牝ばかり発見していたかも知れない。…………

尤も貧しい信輔は到底彼の読むだけの本を自由に買うことは出来なかった。彼のこう言う困難をどうにかこうにか脱したのは第一に図書館のおかげだった。第二に貸本屋のおかげだった。第三に吝嗇の譏さえ招いだ彼の節倹のおかげだった。彼ははっきりと覚えている――大溝に面した貸本屋を、人の好い貸本屋の婆さんを、婆さんの内職にする花簪を。婆さんはやっと小学へ入った「坊ちゃん」の無邪気を信じていた。が、その「坊ちゃん」はいつの間にか本を探がす風を装いながら、偸み読みをすることを発明していた。彼は又はっきりと覚えている。