轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

だいどうじしんすけのはんせい

大導寺信輔の半生

芥川 竜之介

信輔的童年总在肮脏泥泞的本所街头,他却爱那里的每一处破败。三十年后,依然是那些无树无花的街道闯入他的梦。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,611 字 · 26 页

青空文庫

殊に人工の文明の中にかすかに息づいている自然を愛した。三十年前の本所は割り下水の柳を、回向院の広場を、お竹倉の雑木林を、――こう言う自然の美しさをまだ至る所に残していた。彼は彼の友だちのように日光や鎌倉へ行かれなかった。けれども毎朝父と一しょに彼の家の近所へ散歩に行った。それは当時の信輔には確かに大きい幸福だった。しかし又彼の友だちの前に得々と話して聞かせるには何か気のひける幸福だった。

或朝焼けの消えかかった朝、父と彼とはいつものように百本杭へ散歩に行った。百本杭は大川の河岸でも特に釣り師の多い場所だった。しかしその朝は見渡した所、一人も釣り師は見えなかった。広い河岸には石垣の間に舟虫の動いているばかりだった。彼は父に今朝に限って釣り師の見えぬ訣を尋ねようとした。が、まだ口を開かぬうちに忽ちその答を発見した。朝焼けの揺らめいた川波には坊主頭の死骸が一人、磯臭い水草や五味のからんだ乱杭の間に漂っていた。――彼は未だにありありとこの朝の百本杭を覚えている。三十年前の本所は感じ易い信輔の心に無数の追憶的風景画を残した。けれどもこの朝の百本杭は――この一枚の風景画は同時に又本所の町々の投げた精神的陰影の全部だった。