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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

「おやおやこんな晩に火事を出したんだよ。何て間抜けな人足だろう。アラ、驚いた、小屋じゃないか!」

正しく火事を出したのは、女軽業の掛小屋であった。

役人達が遣って来て、立退きを命ずると、急に彼等は周章て出した。そうして役人に反抗し、突然小屋へ火を掛けた。これには役人達も驚いたが、しかし事情はすぐ解った。この時代の小屋者の常で、彼等は反面、賊でもあった。で盗み蓄めた品物が、小屋に隠されてあったのである。

つまり贓物を焼き払い、証拠を湮滅させようため、わざと小屋へ火を掛けたのであった。

それと感付くと役人達は、がぜん態度を一変させ、彼等を捕縛えようと犇めいた。

彼等は男女取り雑ぜて三十人余りの人数であった。それに馬が二頭いた。それから白という猛犬がいた。それから例の鼬がいた。これらのものが一斉に、役人達に敵対した。彼等は武器を持っていた。商売用の刀や匕首や、竹槍などを持っていた。

どんなに彼等が凶暴でも、三十人こっきりであったなら、捕縛えるに苦労はしなかったろう。しかるにここに困ったことには味方する者が現われた。

当時諏訪藩は佐幕党として、勤王派に睨まれていた。