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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

こう云いながら「爺つあん」は布団の上へ起き上った。そうしてつつましく膝をついたお錦の顔をじっと見た。

と、みるみる「爺つあん」の眼から大粒の涙が零れ出た。非常に感動したらしい。

「おかしな爺さんだよ、どうしたんだろう?」

お錦はひどく吃驚した。

勿論彼女には見覚えはない。初めて会った老人である。

「どうして涙なんか零すんだろう? 妾をどう思っているのだろう? 気味の悪い爺さんだよ」

こう思わざるを得なかった。

「トン公」やがて「爺つあん」は云って「ちょっとこの場を外してくれ。ナーニ大丈夫だ、心配しなくてもいい。ただちょっと話すだけだ」

「「爺つあん」のことだ、ああいいとも」

トン公は云いすてて出て行った。

後を見送った「爺つあん」は、その眼を返すとお錦の顔を、またもじっと見守ったが、

「おお紫錦、大きくなったなあ」

不意に優しくこう云った。いかにも親し気な調子であり、慈愛に充ちた調子であった。

お錦にとっては意外であった。何の理由で、何の権利で、紫錦などと呼び捨てにするのだろう? で彼女は不快そうに顔をそむけて黙っていた。

「それに、ほんとに、立派になったなあ」