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おおとりものせんにんつぼ
大捕物仙人壺
国枝 史郎
「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页
「それとてよくはござらぬな。しかし、大勢というものは、多数の意嚮に帰するものでござる。天下は一人の天下ではなく、即ち天下の天下でござる、いや、帝の天下でござる」
「しかし、貴殿は旗本とのこと、すれば将軍は直接の主君、それに反抗するこの我々をさぞ憎く覚し召さりょうな?」
「さようでござる、普通にはな」義哉は敢て興奮もせず「しかしそれより実の所は、勤王、左幕の衝突の結果、世間がいつ迄もおちつかず、その為芸道の廃れを見るのが、拙者にとっては残念でござるよ」
「ナニ、芸道とな? 何の芸道?」
「清元、常磐津、長唄、新内、その他一般の三味線学でござる。日本古来よりの芸道でござる」
これを聞くと浪士達は、一度にドッと笑い出した。それから口々に罵った。
「アッハハハ、沙汰の限りだ。こういう武士があればこそ、徳川の天下は亡びるのだ」
「両刀をたばさむ武士たるものが、遊芸音曲に味方するとは、さてさて武士道もすたれたものでござるな」
「諸君、そういったものでもない」こう静かに止めたのは、例の琵琶師風の浪士であった。どうやら一座の頭目らしい。グイと義哉の方へ膝を進めたが、
「いや仰せごもっともでござる。