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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

「だが親方はどうしただろう?」

もう一人の仲間が不安そうに云った。

「大丈夫だよ、親方のことだ、ヘマのことなんかやるはずはねえ」

「それにえて物を連れて行ったんだからな」

「あいつときたら素ばしっこいからな」

二三人の仲間が同時に云った。

地下室は寒かった。蝋燭の灯が瞬いた。

「酒を呑みたいなあ」と誰かが云った。

「まあ待ちな、もう直ぐだ。なんだか知らねえが親方が宝箱を持って来るんだとよ」

「何が入っているんだろう?」

「小さな物だということだ」

「で、うんと金目なんだな」

「一度にお大尽になるんだとよ」

「源公!」

と一人が呼びかけた。「ひどくお前は幸福そうだな。思う女を取り返したんだからな。……幸福って物ア直ぐに逃げる。今度逃がしたら取り返しは付かねえ」

源太夫はそっちへ眼をやった。

「ふん、女に惚れているんだな」

「あたりめえだ、惚れてるとも、だから苦心して取り返したんだ」

「だが宜くねえぜ、そういう惚れ方は、古い惚れ方っていうやつだ」

源太夫はその眼を光らせたが

「じゃ何が新らしいんだ」

「お前は承知させて、それからにしようって云うんだろう? だめだよだめだよそんなことは……」