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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

四十がらみの大男で、凶悪の人相の持主であった。下っ引の手合も今日はいず、一人いい気持に酔っていた。

朝風呂丹前長火鉢、これがこの手合の理想である。しかし岡っ引の手あてといえば、一月一分か一分二朱であった。それでは小使にも足りなかった。その上岡っ引は部下として、下っ引を使わなければならなかった。その手あてはどこからも出ない。自分が出さなければならなかった。そこで勢い岡っ引は他に副業を求めるか、ないしは地道の町人をいたぶり、賄賂を取らなければ食って行けなかった。

ところで友蔵には副業がなかった。そこで町人を嚇しては、収賄をして生活ていた。

「兄さん」とお花は茶の間へ入ると、風呂敷包をサラリと解いた。「見て貰いたいものがありますのよ。この手箱なの、どう思って?」

伊丹屋のお錦が「爺つあん」から貰い、小堀義哉に預けた所の、例の手箱を取り上げた。

「変哲もねえ杉の箱じゃあねえか、これが一体どうしたんだい?」友蔵は手箱を取り上げた。

「何でもないのよ、見掛けはね。でもちょっと変なのよ」

お花はそこで説明した。

先夜小堀義哉の家へ、変な泥棒が入ったこと、金も衣類も持って行かずに、この箱ばかり狙ったこと、そこで策略を巡らして、泥棒に贋物を握らせた事、そうして本物は窃りと、自分が隠して置いた事、義哉へ箱を預けたのが、日本橋の大老舗