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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

傍に檻が置いてあり、中に大鼬が眠っていた。

二人の前には壺と地図とが、大切そうに置いてあった。

窓から夏の陽が射していて、喚気法の悪い部屋の中は、汗ばむ程に熱かった。

「……と、つまり、云うわけさ。ナーニ、ちょろりと横取りしたのさ。へん、えて物さえ使ったらどんな宝物だって盗まれるんだからな」

得意そうに文は話し出した。

「ところで親方、その壺には、何が入っているんですえ?」こう不思議そうに銅助は訊いた。姦悪の相の持主で、文に負けない悪党らしかった。

「そいつア俺にも解らねえ」文は渋面を作ったが、「福の神だということだ。とにかくこいつを持っていると、いい目が出るということだ……これはな、伝説による時は、支那から渡ったものだそうな。甲府のお城にあったものさ。元禄時代の将軍家、館林の綱吉様が、ある時お手に入れられた所、間もなく江戸城お乗込み、将軍職に就かれたそうだ。そのお気に入りの柳沢侯、最初は微祿であられた所が、この壺を借りたその日から、トントン拍子に出世されたそうだ。……で、この壺はそれ以来、甲府勤番御支配頭の、保管に嘱していたものだそうな。そうして甲府城の土蔵の奥に大切に仕舞って置かれたんだそうな。