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だいこのは

大根の葉

壺井 栄

「文芸」改造社、1938(昭和13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,854 字 · 50 页

青空文庫

やっとおばあさんが来て抱き起した。顔じゅう土だらけになって目も鼻もない。ペッ、ペッ、と唾を吐いた。

「ほら見い、ほら見い。走りよったら危ないんじゃ。泣くなよ、泣くなよ、目々あけなよ。」

おばあさんは片手で健を引っかかえて頭を支え、もうたけて花のついたしゅん菊をむしりとっては口や鼻をぬぐった。しゅん菊の高い香りが健の鼻の奥へつき通るようにしみこんできた。健は土だらけの手を払いのけようとした。

「くさいがい、くさい菜好かんがい。健、くさい菜ほん好かんがい。」

「おおそうかそうか、ちょっと待てえよ。」

おばあさんは健を抱いたまま歩き、今度はほうれん草をちぎってふいてやった。

ぶううん――と、尾を切ったような汽笛がひびいてきた。汽船が健の村の港を出たのであった。

「ほら、ほら、蒸汽が来るぞ、いんま見えるぞ。」

おばあさんはパタパタと健の上着をはらい、パンツをはらった。健も手のひらの土をパチパチはらった。そしておばあさんと同じように額に手をかざして沖を眺めた。岬の鼻から汽船はしずかに姿を現わした。

夕日が映えて海は金色に輝いてまぶしかった。きらきら光る波の上を船はだんだん速力をまして、潮を切ってまっすぐに西へ西へと進んでいった。