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だいのうしゅじゅつ
大脳手術
海野 十三
「富士」1945(昭和20)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,185 字 · 31 页
私は先生の咽喉を締めあげた腕を解き、その場に平伏して非礼を詫びるしかなかった。そしてその日、私は私の両の腕を先生に買取って貰ってから、そこを辞した。値段は百十五万円であるから、普通以上のよい値段であった。その代りに私は八千五百円を投じて割安な轢死人の両腕を譲りうけ、それを移植して頂いた。で、手取りが百十四万千五百円也となった。これだけあれば、当分生活に困らない。
こういう呪わしき境遇に追込まれた者の常として、平面無臭の生活ができないことは首肯されるであろう。私の場合においてもこの例に漏れず、日夜刺激を追及し、その生活は次第に荒んでいった。その行状は、ここに文字にすることを憚るが、私の金づかいも日と共に荒くなり、両腕を売飛ばして懐に持った百十四万余の大金も、そう永からぬ期間のうちに他人にまきあげられてしまい、私はまた金策に苦労しなければならなくなった。そして結局は、酒の勢いに助けられて和歌宮先生の門に飛込み、或いは心臓を売り、或いは背中一面の皮膚を売りなどして、内臓といわず何といわず、次から次へと売飛ばして金に替えたのであった。只そのような際に、常に守ったことは頸から上のものについては一物も売ろうとはしないことだった。