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だいのうしゅじゅつ

大脳手術

海野 十三

「富士」1945(昭和20)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,185 字 · 31 页

青空文庫

そして今夜はたとえどんなことが起ろうと僕が引受けてうまくやるから、君は安心して睡れといって呉れた。お蔭で私は、ぐっすりと安眠することができた。

朝が来た。窓が明るくなると、私は反射的に跳起きた。愕くことはなかった。鳴海が傍でぐうぐうと睡っていたし、家は彼の宅であった。追跡者も、遂に私の身柄を取押えることができなかったのである。一安心だ。

食堂へいって鳴海と共に朝食を済ませた。それから彼の部屋へ行って、電気暖房を囲んで莨をのんだ。

そのとき鳴海が、突然妙なことをいい出した。

「ねえ闇川。一体、迎春館主和歌宮鈍千木師なる者は実在の人物かね」

私は声が詰って、しばらく返事ができなかった。

「何故急にそんなことを訊くんだい」

「だって僕は、これまで和歌宮を散々尋ねて歩いたんだが、遂に彼を見ることができなかった」

「探し方が悪いんだろう」

「いや、そうとは思えない。僕の調べたところでは、多くの人々が迎春館という名を知っており、和歌宮鈍千木師の名前も聞いて知っているが、さて迎春館のはっきりした所在も知らず、また和歌宮師に会った者もないのだ。変な話じゃないか。君は、これに対してどういう釈明を以て僕を満足させてくれるかね」