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だいのうしゅじゅつ
大脳手術
海野 十三
「富士」1945(昭和20)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,185 字 · 31 页
私は失望を禁じ得なかったが、そのうちに不図気のついたことは、この医書はかなり版が古いことである。そこで今度は近着の医学雑誌を片端から探してみた。するとそこに耳よりな新説が記載されているのを発見した。
“……大脳手術の最近における驚異的発達は従来不可能とされた諸種の問題を相当可能へ移行させた。老衰せる脳細胞は、若き溌溂たる脳細胞に植継ぎて、画期的なる若返りが遂げられる。かかる場合、知能的には低き脳細胞へ移植を行うことが手術上比較的容易である”
この一文は、私に新なる元気をもたらした。有難い。わが脳細胞の老衰は全然処置なしではなかったのだ。私は何とかして若返える途を発見せねばならぬ。それにはどうしたら一番よいであろうか。
いろいろ考えぬいた揚句、私は遂に一案を思付いた。それは甚だ突飛な解決法であった。しかし現在の私のような境涯にあっては致し方のないことだ。読者よ、呆れてはいけない。私は、私の体に残れる本来の私の最後の財産たる老衰せる大脳の皮質を摘出して、これを動物園につながれている若きゴリラの大脳へ移植することを思付いたのだ。何と素晴らしきアイデアではないか。